銀座のクラブはつまらないぞ
いやはやのどかな話題である。今から3年以上前の話である。2019年7月のことなのだ。人気俳優であり歌舞伎俳優でもある香川照之さんが銀座のクラブで女性に性的な加害をしたという。翌年の5月になって女性は暴行を受けた香川さんではなくクラブのママに損害賠償請求がなされた。でもこの訴訟はすでに取り下げられ、話し合いは終っているわけだ。裁判官が証拠に基づいて認定した事実ではなく、香川さんに直接裏を取ったわけでもない。ただ胸を触れられたり、キスされたホステスはこのセクハラ被害でPTSD、になったのだとか。確かに女性の髪を引っ張り上げて得意になったような写真が広がっている。自分の髪を引っ張り上げれば問題は起こらなかったのに。別にありふれた事件なのに、ママは銀座で信用を失い、セクハラにあったホステスさんは銀座を離れ、なによりも香川さんは、スポンサー契約を破棄され、番組は降板の憂き目にあい、信用だけなく、経済的損失も巨大すぎる。 今後歌舞伎の舞台に立てても、狂って大声をだすような役回りの出し物しか受けないのではないか。 いやはやそこが人気俳優の辛いところであろう。ほんに争いごとはいいことは何もない。 わたしとて銀座の夜に出向いたことはある。誘われたり、行きがかり上覗いた程度のことだが。でも楽しいと思ったことは一度もない。 どうしてなのか。自腹を切ると言っても1万円ほどのことだから、ねぐらの新宿周辺とそんなに変わらない。ただ銀座という言葉にはいささか魔力が潜んでいるらしく。通う人は若い時から出入りしていると自慢できるのである。サラリーマンとなれば、自腹ではなくみな会社の経費であろうから、それほど自慢できることとも思えない。定年を過ぎると運ぶ回数もぐっと減るであろうし、何よりもママの方だってくたびれて往年の輝きは失われているに相違ない。 幼いとき近所にも女の人はいた。特別にきれいとは思えなかったが、上京して都会の水を浴びるうちに洗練され、化粧上手になり、高級のお召し物の装いを決めれば、いっぱし銀座の女が誕生する。店も持てるようになる。男もいろいろだから、夫がちゃんといるのに独身ツラを前面に、あるいはパトロンパパを頼りに都会の夜を泳ぎ切っていく。夜の水商売には国家試験はない。自分の裁量でどうともなる商売である。夜の社交場にはトラブルは付きものだ。酒も入っている。客だっていろいろだ。事業で成功している人であっても。世の変転は常の事だ。商売がいけなくなると、おあしがものをいう世界だから遠のいて消えてしまう御仁もいる。とくに酒好きでもない、女好きでもない、はしゃぐのは苦手な人は近づいてもいいことはない。スポンサーつきで行ってもご機嫌取り係ではつまらない。自分の金を使うのももったいない。かくして夜の銀座に近づかない限り、一家は安全地帯となる。本文の真意は 、銀座の女をいたずらにディスルものではない。水商売を生計とする人たちは銀座の女だから尊いというのではなく、人間愛に溢れた女性は津々浦々にいるものだと言いたかっただけなのである。 ( 2022/9/05 )
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