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世のうちそと

 熱海花火大会

熱海花火大会

 残暑が厳しい1日。気温35度。駅でタクシーに乗る。熱海の夏花火の最後日。運転手は「今年で見納めかも知れない」と言う。泊まりがけの観光客が少なくて、皆日帰りで帰る。宿泊費も安いためホテル旅館組合もメリットがなくなってきた。今年でスポンサーが降りるかも知れない。そのような話だった。

 三時間も待つなんてと思うが、気長に待つのも楽しみのひとつだ。

 花火の打ち上げは8時過ぎ。空には夕陽の名残雲がダイダイ色にたなびいている。待ち人もパラパラだ。ファッションもいろいろだ。思い思いの服装で人々が通り過ぎてゆく。近くに海水浴場があるせいか裸同然の人もいる。

 皆ビニールシートで場所取りをしている。シートを広げ、ビールや飲み物を置いているモノに関取をさせている。

 太陽もようさく姿を消し周囲は暗くなってゆく。ビルの赤や緑のネオンがいよいよ濃く明瞭になる。

合図の一発が打ち上がった。開演1時間前だ。

 ぞろぞろ人が入ってくる。ひっきりなしで途切れることはない。横になっている人もいる。こうして始まりを待つのだ。
おいしそうにご飯弁当を分け合っていたと思ったらゲームをしていたのにごろり。待ち時間を楽しんでいるのだ。

 携帯片手のゆかた姿のお嬢さん。最近はすらりと姿がいいので素敵に見える。得した気分になる。

 隣では焼き鳥をむしゃむしゃ、左のベンチでは、肩に手をまわしうっとりしている。連絡船が見えて、中空には燃える赤い月が。

 突然ズドンと我に返ると花火が打ち上げられ異次元に突入。拍手と歓声が上がる。
花火はドラマ仕立てでいつも同じでも、夏の風物詩の続行をのぞみたいひとりだ。

( 2010/11/15 )

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