自転車専用レーン
自転車専用レーン
歩道と車道しかないわが国に、自転車専用レーンがお目見えしそうだ。
国土交通省の試算では、主要道路の8割で自転車レーンが設置可能という。車道の左端に線を引くだけだから経費も安く済み自由度も大きい。
二酸化炭素も出さないエコ車であり、有酸素運動を誘うから健康にもよい。普及が進まないのは、これまでの道路行政が定まっていなかったためだろう。
自転車に歩道を走らせたのはいいが、事故がここ10年で3・7倍に急増しているという。乳母車、人、自転車、車の順に優先させた施策を急ぎたいところだ。
この夏、炎天下のさなかに都内を起点に山梨県大月までの国道20号線の旅、ペダル漕ぎに挑戦した。結果は無残である。
愛車「ドリーム号」は10年使用のボロタイヤで溝も消え、擦り切れて丸坊主状態。立川であえなくパンク。さらに八王子ではギアが壊れた。そして大月手前では、あまりの熱さにやられてワイヤーまで切れた。人に例えるなら満身創痍である。
乗り手もまた、還暦を過ぎている。というのに、己の体力を過信して、ほとんど寝ていないまま炎天下のロードに銀輪を滑らせてしまったのだ。ヨロヨロの脚力は主人の意向通りには走ってくれない。体力使う上に頭、身体を覆うものとてない。体力消耗ははげしい。
有酸素運動で肺には良いというもののきつすぎる。ハアハア喘ぎはまるで犬なみだ。しかも道に迷って精神的に不安がくる。 周りに家もない。ときおりファーストフード店の灯りと、大学が点在するていど。
陽も落ちてきた。それでも勾配の きつい山道をまたゆく。 魔物でも棲んでいそうな気配だ。東京と神奈川県の県境のてっぺんを走っていたのだ。
文字通り草臥れて道路の路肩に身を投げ出した。2時間ほどねむったであろうか。耳元で羽音がする。天を仰ぐと橋げたの裏側が見える。その一角にスズメバチの巣。あわててふたたびボロ愛車に乗り込む。人車一体、銀輪サイクリングもらくではない。自転車は修理屋で再生が効くが、人間の方はそうもいかない。秋風が吹く季節がきても疲れは抜けない。
オランダやデンマークなどは自転車大国の国として知られる。市民の40%近くが通勤、通学に利用している。オランダの街を思い出した。運河の国である。時折り運河のどぶさらいをする。と、出るわ、出るわ、数え切れないほどの自転車が沈んでいる。酔っ払いが投げ込む、盗難車が投げ込まれる。
自転車ブームは歓迎だが、放置自転車対策、マナー教育の充実もこれまで以上に必要になろう。
何よりも山坂の多いニッポン、炎暑の夏が恒例になりそうなジャパン、これにはどうにも対策は一筋縄ではいきそうもない。 ( 2010/11/01 )
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