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 感じさせることに徹する
感じさせることに徹する
大森博著「 端景�供�
善福寺公園など都内のごくふつうの公園が異次元の場所に見えてしまう。こどもとブランコ、人の乗らない夜のブランコ、後ろ姿が多いのはシャイな人なのか、気難しい人なのか。
三脚を据えてある瞬間の景色を切り取る。絞りを変え、ぼゃっとしたした絵が現れる。そこがシャッターチャンスだ。
大森博著「 端景�供廖淵�ャラリー蒼穹舎刊）。最終日、新宿御苑近くの、写真展も覗いてみた。
「端っこ」という考えを意識してレンズに託すということはどのような行為なのか。静かな写真が多い。でもどこか落ち着かない。
中の一点、明るい日差しをいっぱいに浴びた枝葉と巨木の黒い幹。このような構図は山の中では頻繁に出会えそうな気がする。ただし、その奥に点景としてあるかなきかの人の姿は、生き物というよりもなにか自然の一部と化して、投げ出されたように見える。溶け込んでいる。レントゲン写真を見るようでもある。一目では何が写し取られているのかはっきりしない。
だが、狙いははっきりしている。端っことは何かということを見せてくれるのだ。じっくりと見ていれば、そこにものの本質の別のものがあるということだ。見る人が何か考えてくれなきゃ困ると、わざとじぃっと撮った作品なのだ。天の邪鬼なのだろうか。
抽象的でもあり、 景色のどこを切り取ったものかすぐにはわからないものもある。日常の何気ない風景から何をとりだすかは写真家の思想だ。そこに焦点が合っている。
気持ちの悪いものもある。ぼんやりとしたものが見える。強烈な社会的メッセージを発しているわけでもない。
その場の自然の持ってる空気が好きでそれを大事だと思っているようだ。
自然は絶えず流れている。説明しなければわからないものは説明してもわからない。感じさせることに徹した写真だ。写真は場面構成や場面と場面との接続から生ずる表現力がビビッドに出てしまうもの。公園の何気ない風景であっても凝視することで本質が見えてくるものなのだろうか。
本人は写真集のあとがきでご自分の写真行為を「見逃してしまいそうな片隅の写真風景や移ろいゆく時間が映り込んだ写真を」めざしていると宣言している。どうも、それが生の実感ということらしい。
( 2010/09/15 )
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