のだめカンタービレ
のだめカンタービレ
話題の映画「のだめカンタービレ」を観た。
映画は種典型的と言えるパターンで出来上がっている。ドタバタ愛憎喜劇のお手本ともいえる。だからラストシーンについてもハッピーエンドになるとの想像もできる。
若者たちが新たな世界に旅立とうとしている。ハッピーエンドが望ましい。明るい作風に、 楽しいエピソードを絡めて観客をハラハラさせるところが見せ所になる。感情のすれ違う男女、常識では計れないキャラクターがカンどころだからだ。相思相愛の間柄に気がつかないふたりのテンポとセンス、演技も悪くない。
ここにはマンガのコマワリでは得られない大画面と音響がある。問題はマンガの中から抜け出した主人公の魅力が肝心だ。主演の男女ともまずは納得いく配役であった。のだめ役はいじらしくかわいらしく、憎めないキャラクターでなければならない。天然の人の良さが伝わってこなければならない。
男優も人気が出ているらしく、冷たさの中にも愛嬌あるキャラクターに造形されていた。実際は指揮棒は振ったことはないという。なのに練習に練習を重ね、「腕が太くなってしまった」というエピソードも好ましい。役作りにはたいへんな努力がいる。
映画はヨーロッパが舞台だから、外人が日本語を話すのはへんなのだが、アテレコでも不自然さは感じない。なんでもありなのである。
空前のクラシック・ブームが巻き起こったとされる2006年。火付け役は生誕250年のモーツァルトであった。が、一般の人にもクラシックファンを増大させたのが、この連載コミックだった。作者はプロに取材した上で、ていねいにその世界を再構築し、ドラマに描いてくれたのである。
この映画はずばり音楽映画である。スクリーン上でもたくさんの曲が流れる。本音を言えば、わざわざ前後編に分けて上映しなくても完結編までを一挙に作ってしまってもよかったような気がする。
主人公たちの無防備なキュートさ、太っ腹で気っ風がよくて周囲の人達にポンポンとものを言う。多分に今の若者の空気を伝えているのだろう。部屋が散らかっているとか、胃腸が丈夫だとかいった主人公の性格づけはドラマに陰影を与えている。共感をよぶ生活スタイルなのだ。 ( 2010/03/01 )
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