「THIS IS IT」
「THIS IS IT」
昨年6月に急死したマイケルジャクソンさん(当時50歳)が訴追決定した。麻薬薬を投与した医師との認否の予備審査の手続きが始まる。スーパースターというのは死後も様々な話題を提供する。
アンコール上映されている「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」を観た。何度も劇場に足を運びその都度感激も新たにしている人もいる。どこが人を魅了しているか。ヒット曲名を題名に据えたことを問題にする人もいるようだが、これはこれでいいと思った。「あの人にはIT(イット)がある」といった言い方をするように、何かプラスアルファの魅力を指している場合を好意的にいうからである。
映像と音とダンス、それらの融合が極めて今日的に編集されている。主人公はすでにこの世にいないという思いも常によぎるために、何か独特の気分にさせられる。
場内はほぼ満席で、座っているのは若い人たちだけではない。年配者も目立つ。それが、終わりのクレジットが出て、場内が明るくなるまで席を後にする人はいない。感動したというよりも観客を釘付けにする何かがあったのだ。それも「IT」である。
みなこの不出世の天才の早すぎる死に対し黙祷を捧げているようにみえてしまう。
マイケルから発せられる一つひとつの言葉や注意や提案になにがしかのメッセージがふくまれているようで彼のエンターテイメントに賭ける執念のようなものが観客まで届き納得させる。
ぎりぎりまで確認する。その小さな彼の思いが一人ひとりにつながっていきみんなの心が一つになっていく。彼が見せる激しい肉体の動きは驚くべきで、あのまま天国に旅立ってしまうとはとても信じることはできない。
どれほど激しく踊っても汗ひとつかいていないのはどうしたことか。リハーサル時から本編を意識していたのか。
声もまた張りがあり、その変幻自在、艶やかな声質に酔いしれてしまう。
映像や舞台の仕掛けも度肝をぬく。観客席に座る人は別次元の場所と時を共有する非日常の世界にいる錯覚を起こさせる。それこそがマイケルが志向したコンセプトなのだ。
彼の素晴らしいのはそのメッセージの強烈さだ。大自然の脅威を唱え、かけがえのない地球を愛そうと叫ぶ。それは付け焼刃とは思えない。天才が未来を感じ取り、警告を早くから発していたのだ。
映画の素晴らしさとは別に、なんとも惜しまれる死である。実に「IT」だらけの映画だった。そして早くも映画のDVD版が発売された。ファンがいる限り彼は生き続ける。 ( 2010/02/05 )
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