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世のうちそと

 軽井沢「脇田美術館」にて

軽井沢「脇田美術館」にて

生誕101年の脇田和の世界


JR軽井沢駅から約10分、旧軽井沢の趣の中に脇田美術館はある。
現代洋画家を代表する脇田和が、長年の夢を形にし1991年にこの美術館を造った。長年愛用したアトリエ山荘を囲んで美術館は建っており、さわやかな木々と採光の中で親密で深い感動の世界を堪能できる、自然と響きあう美術館である。美術館と並んで建つアトリエは、建築家吉村順三氏によって1970年に作られたもので、近代日本の木造建築を代表する重要な建物としても有名。

美術館の中庭に面して脇田美術館のオリジナルグッズを扱うミュージアムショップとティルームがあり、ショップを抜けて回廊から見える中庭中央には大きな”こぶしの木”があり、木につけられた鳥かごには鳥たちが集う。絵画の余韻に耽りつつ、鳥たちがさえずる声に耳を傾けながら、是非くつろぎの時間を楽しむことができる。

自然や人生への透徹した視線が感じられる脇田和の絵画宇宙は、しばしば澄んだ音色を響かせる室内楽にたとえられる。緑の木立のなか、典雅な“色彩の音楽”がいきづく。現代洋画界を代表する脇田和の油彩、素描、版画等約1,000点を収蔵。1920年代ドイツ遊学時代から第2次大戦をはさんで現在の作品まで、画家の全貌をつたえる展示をおこなっている。 

2008年は脇田和の生誕100年にあたった。この美術館は曲線美が印象的な外観が特徴だ。生前、自らが住んだ軽井沢を愛した画家が自分の作品を展示する美術館を建てた。死後十一年なるが、過ごしたままの状態で保存されている。

 この油絵画家は若いころ8年間ベルリンに学んだ。ゴーガンの色彩感覚に影響を受けた。裕福な家に育った。生まれは東京青山である。幼い時から祖母の影響を受け、墨絵に親しんだ。広い敷地の自然のままの庭が日常であった。鳥の絵が多いのは墨絵の中から学んだものである。鳥の生態を熟知していたからである。さまざまな生き物も自分の家の周りから学んだ。

 もう一つのモチーフにこどもがある。子どもには大人よりも長い時間がある。つまりは長く持ち回れるものを愛したのだ。その基本は愛情である。

 帰国してから日本モダニズムの旗手と称された。何かを求めひたすらつき進むが、ただ完成はない。
一枚でもたくさん描くという情熱と色使い、仕事の持続を第一とした。毎年渡り鳥のようにハワイに行く。「鳥のみちびきかも知れない。おかげで元気になる」と発言している。この感謝の意味のためか鳥は一輪の花を咥えている絵が多い。

 鳥を描き始めたのは1950年前半、その後生涯にわたって持ち続けるモチーフとなる。彼の原風景なのだ。鳥の写生帳を繰り返し眺め模写したのだ。

画面は舞台のようにそこで演じられるのは芝居、音楽、踊りなどだ。そこには幕開けがあり幕切れがあるように描かれた。この仕組みがうまくいかないと舞台は台無しである。絵ではデッサンが無いというのと同じではないか。どこで始まりどこで終わるか、造形の難しさである。抽象の強い絵が多く色使いだけがみるものにやさしく語りかけてくる。ゴーガンの色から生涯離れることはなかったのも性癖といえるかもしれない。

このため彼の略歴もこうだ。脇田和(わきた かず) 1908年 東京に生まれる。 1923(15才) ベルリンに渡航。ドイツ帝室技芸員マックス・ラーべスに師事。 1925(17) ベルリン国立美術学校に入学。 以上である。

( 2009/07/15 )

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