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 西大寺鐵道展を覗いて
おめでとう100歳
西大寺鐵道展を覗いて
JR岡山駅からJR赤穂線に乗り17分、JR西大寺を下車して25分ほどの都市緑化フェアのメイン会場を目指していたらたまたまバスセンターに出た。気動車が一台、まわりを植栽に囲まれて展示されている。日本でも珍しい軌間、3フィート（914ミリメートル）の鉄道で使用された「キハ7」である。2004年に産業考古学会の推薦産業遺産に認定された気動車である。当時使用されていたポイント切り替え機も併設されていた。その近くで「西大寺鐵道展」が開催中であった。「おめでとう100歳ありがとう100年。わたしたちのけえべん」、とある。
岡山市西大寺には「西大寺会陽（さいだいじえよう、通称：はだか祭）」で有名な西大寺（観音院）がある。歴史を感じさせる町並みに吉井川や水路網などが隣接しており、水辺空間の豊かな地域となっている。
岡山市西大寺と、岡山市中心地にある日本三名園の岡山後楽園外苑、(現在の夢二郷土美術館のある地)を結ぶ11・5キロを走る軽便鉄道があった。それが「西大寺鐵道」である。「けえべん」の愛称で地域の人たちに愛された。
もともとこの鐵道の存在を知らない身だ。違った街で育ったのだから当然だ。この世に生まれてさえいない。それでも何か気を引くものがあったため場内に足を踏み入れてみた。
紹介されている写真パネルのほとんどは、昭和41年4月に開催された「西大寺鐵道〜ありし日の軽便〜」で展示されていたものだと説明があった。作品は写真家・山崎治雄氏をはじめとする「岡山すぎなクラブ」よるもので、両備ホールディングス�蠅料歓函⇔照�バス�蠅�寄贈を受けたもの。今回の写真パネル公開は42年ぶりということになる。
隅には映像コーナーがある。西大寺鐵道記念映画「風雪五十二年」が上映されていた。西大寺鐵道が閉業した昭和37年に制作された約20分ほどの記録映画である。たまたまひとりで見るはめになった。
鐵道は1910年に開通した。踏切も人の手が頼り、坂道で止まってしまった時は客がすすんで押す、とっくり型の煙突や自転車も乗せられるデッキなど、ユニークなうえに実に人間臭い。あの頃は今ほど便利ではないけれど、人も列車もみんなが助け合ってくらしていたことが伝わってくる。しあわせな時代が感じられる。
2010年、100歳を迎える。100年記念と感謝の気持ちを込めて、写真、切符や列車の模型、映像などの資料を一堂に集め、往時を振り返って懐かしんでもらおうという、とっておきの展覧会なのだ。廃線直前の昭和30年代を記録した写真150点は42年ぶりの公開。セピア色の写真のむこうから昭和日本のなつかしい情景、人々の何気ない日常や、子供たちの無邪気な笑顔、のどかな田園が広がる沿線風景とともに「けえべん」が走る。懐かしさは日本のどこに生きようと共通の思いで懐かしさが迫ってくる。この懐かしさはなんなのか。ここに映し出されているものは、すでにみな過去のもの、遠くに逝ったひとびとの写真であり、映像である。
「けえべん」は保存され残っているが、人の命ははそうもいかない、思わず知らず手をあわせていたのである。
( 2009/04/01 )
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