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 坂の上の雲ミュージアム 開館記念テーマ展示「子規と真之
平成19年4月28日、松山市一番町三丁目にオープンした「坂の上の雲ミュージアム」は、安藤忠雄設計による約936平方�叩�延べ床面積3122平方�叩�地上4階、地下1階建ての建物。総工費13億円。道路財源を活用して建てられたものである。
城山の南のふもと、松山のまち全体をフィールドミュージアムとする構想の一角を担う施設。来館者は三角形を描くスロープでつながれた展示室を回遊しながら上がって行く。けっこうきつい。上階までエレベーターで直行させて、下りながら展示室を見て歩く趣向を考えたほどである。
司馬遼太郎の作品「坂の上の雲」は、日本における近代国家の形成を大きな時代の流れのなかで描いたもの。松山出身の正岡子規と秋山好古、真之兄弟の三人を軸にしながら展開してゆく。２００９年から３年間かけて各回９０分、全１３回のスペシャルドラマとして放送すると、NHKは発表した。
開館記念テーマ展示「子規と真之」を見た(3月23日まで)。正岡子規と秋山真之の人生に焦点を絞り明治という時代の風景の一端を紹介する内容になっている。ただし、この展示がどのような意味があるのか、ほとんど理解が行かなかったのは残念だった。
小説のあとがきには「のぼってゆく坂の上の青い天にもし一DAの白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう」と書かれている。
その日も真夏の雲がぽっかりと浮かんでいた。どこか荘厳な美しさに、思わず敬嘆する。司馬遼太郎氏も同じような雲を見て題名を決めたのかも知れないと考えた。ささやかだがうれしいことだった。
展示は長大な年表からはじまっていた。小説の経過と連動させている。小説に登場する子規と秋山好古、真之兄弟の生涯を中心、小説の世界が表現されている。
秋山好古は安政六年に生まれ陸軍大将などを経て昭和五年、七十二歳で亡くなる。弟の秋山真之は慶応四年生まれて海軍中将となり大正七年、五十一歳で死ぬ。正岡子規は慶応三年に生まれ、俳句、短歌の革新に着手したものの明治三十五年、三十六歳の若さで亡くなる。
つまり、遅く生まれた順に亡くなっている。年表でみると三人の主 人公の生き方と人間関係がよくわかる。
秋山真之は日露戦争でバルチック艦隊を滅ぼす作戦をたて実地した男。兄の好古は、ただ生活費と授業料がいらないというだけの理由で軍人の学校に行く。
ある時代にあった典型とも言える青春群像を描いた大河小説だ。
身分の低い家に生まれた彼らも都会に憧れ勉学に勤しめば、日本を動かす人物になれるという希望に満ちた時代であった。
今は親世代が豊かだから大学に学ぶ環境は調っている。逆に目標も持てない。考えようによってはとても不幸な時代とも言える。戦争はやってはいけないことであるし、賛美されることではない。テレビでも放映される準備が進められている。
日本という国が古い体制から脱し近代国家に脱皮していくにあたって、日本人がどのように生きていたのか。なんとも勇気づけられる企画であるはずなのだが。
( 2008/03/01 )
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