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緑風

 ぶちかまし

カレンダーとにらめっこして令和4年「間もなく終わるんだなあ」との感慨も深い。スポーツの日も終わり、来月は文化の日、3連休が続き、年末はクリスマスに浮かれているとすぐに新しい年になる。後期高齢者になると年を取るのはそれほどうれしくない。老後生活は牢獄なのか、幸福に満たされるものになるのか、人さまざまだろう。せっかくの長寿の時代なのだから、自分はこう生きたいという希望通りに全うしたいものである。イヌネコだって安心安全な環境で生を終えたいと思っているはずだ。まして人間はそうであってほしい。
寿命に個人差がつくのはどうにもならないが、後期高齢者ともなれば、二本足の人間はどうしても不安定になる。老化が進むと転ぶことが多くなる。転ぶのは運動不足の身体的な現象だから立派な病気である。二本の足できちんと歩けないほど機能が衰え弱っているということなのだ。命に黄信号が点灯しているのだ。さらに、前立せん肥大と診断されれば、おむつパンパースのお世話になり、これでは新生児に戻ったようなものである。
 酒も飲んでいないのに、下半身はなぜか千鳥足になる。こうなるとボチボチ墓地が近い。
 わが実りの少ない人生を振り返るとき、自分のやりたいことをやってきた人生を素晴らしいと思うはずだ。新聞を出すということを主な仕事にしてきたが、これからもこれまで通りぶれずに誠実を貫く決意だ。
 朝起きて薬を3粒飲むのが1日の始まりだ。バックを背負って仕事場に向かう。ゆるやかな坂道を下ってゆく。ところがだんだん加速がついて、ブレーキが利かない。ついには老人ホームの玄関扉に正面からぶちかますことになった。ラクビ―なんか知らないのに相当な衝撃だった。ばらばらと部品の落ちる音がして、防弾ガラスの玄関を破壊した。なのに、本人は無傷である。周りの人が驚いていた。ともあれ病院で主治医に相談したところいまの医学でも証明できないことは「7割はある」、との仰せだった。死期はまだまだ遠くにあるらしい。死神がやってきたら修練したぶちかましで撃退でできそうだ。

( 2022/10/18 )

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