50年目の憂鬱
創刊50年だからと言って、とりたてて記すこともない。終点を迎えるまでは、号数を刻むだけのことである。それでも、祝っていくつかメールをいただいたことはうれしかった。世界的にコロナ病が吹き荒れても、海の向こうで戦争が始まろうとも、国内で元首相が襲撃されようとも、世の中は進んでいくものである。 小紙のテーマは「人と緑を結ぶ」を掲げていた。私は創刊以来、1面に「緑風」を書いてきた。題名とは裏腹に、それほど緑や造園、植物などについて書いてはいない。かけないといった方がいいかもしれない。それは専門家の先生の筆に頼り切っている。今回も連載をもつ岩手の野田坂伸也さんのお便りをベースに紹介する。連載が始まるとみなさん長い。ただし紙面が窮屈なので時には休載を願う時もあるが、余裕ができると再筆をお願いする。このため緑の書き手と読者を結ぶといった趣だ。どなたも近藤三雄さんと山田宏之さんの連載の凄さを指摘する。近藤先生は、その最初が、東京農業大学講師の時代にさかのぼる。何回も手術をして、普通の人なら精神的にも参ってしまうのに、入院した場所で早速テーマを発見して書いてしまう、というタフさに驚嘆する。編集部に届く原稿も1か月前以上前に届く。今や「書くこと」が生きがいとでもいうように、鬼気迫るものがある。 山田宏之さんは、さまざまの現場を見ては(私も知らない)ような植物の話を次々と紹介してくださる。その行動力と博識にはほとんど驚きます。 中橋文夫さんの情熱もすばらしい。最近は10年に及ぶ労作、世界的建築家とされる安藤忠雄の近年の作品と行動について造園家として異議申し立ての書だ。そのために出版社を立ち上げる程の行動派である。 小杉左岐さんについても触れている。「世界を股にかけての訪問記事には驚嘆するばかりです」とある。「岩手県の片隅から何十年も出たことのない人間とは全く対極の行動力で」と記している。そして「山田さんのように様々なところの出かけては次々と新しいものを紹介してくださるエッセーと、私(野田坂)のように狭い範囲しか見ることが無くて書くエッセーの対比も珍しいでしょう」と述べている。ありがたい話としてここに紹介した。 ( 2022/8/06 )
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