からっぽ五輪
東京のイベント開催が遠く離れた田舎にも影響を与えるものである。ましてや4年に一度開かれるオリンピックとなれば世界中で注目を集める。今回は常のときとは異なる。新型コロナが吹き荒れている中でのオリパラとなった。 国民の8割は中止か延期を求めていた。「開催しない方がいいと意見する識者、実力者の声も大きかった。天皇陛下までが懸念を寄せた。スポンサー企業でもある大新聞さえ反対の論調を載せた。それでもオリパラは決行されるのだ。 国民の命と健康を守ると言っていた人たちは、実際はそうでもなかったのだろうか。 もはや日の丸金メダルがたくさん得たとしても真底うれしくないと思う。国民の犠牲の上にぶら下がったメダルならうれしくない。気も引けるはず。 そして遂に無観客という事態になった。確かに関係者が東京オリパラは中止や再延期すると声明を出したことはなかった。決定権持たない外野席が騒いでいただけなのだ。かくして東京オリパラは開かれる運びになった。そうなると日本中は熱烈歓迎に舵を切るはずだ。 半世紀以上前、東京でおこなわれた前回の大会は日本中が湧いていた。田舎の高校生だった私さえ喜びに満ちた気持ちで開会式を迎えた。記憶に残っているのは、お家芸のはずの柔道無差別級で神永氏がオランダのヘーシングに寝技をガッチリと決められて金メダルに届かなかった。マラソンもそうだ。アベベ選手がトップだった。3位に円谷選手が入って国民は熱狂した。ただご本人は「幸吉はもう走れません」との言葉を残して自裁した。これらの2つのエピソードは胸に空洞が空いたような気がしたものだ。今度のオリンピックは前回にも増して、大きな空洞が待っていそうな気がしてならない。まさしく新国立競技場の天井を見るたびにそんなよ気分になる。 ( 2021/07/15 )
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