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 ワクチンはまだか



 「文章は私事と私欲をそぎ落とすこと」といい切ったのが時刻表作家・宮脇俊三さん
(故人)だった。
確かに文章に自分のことを書き込み過ぎては、読み手は興ざめする。近年は一般紙にも末尾に記者の名を記すようになった。多くの人はその名を知らないし記憶することはない。書いた尻から情況は変わる。翌日には古くて間の抜けたものになる。
記すならば書いた年月日を印した方がよい。アリバイになる。コロナが流行する前と今では書き手も、受ける読者の感想も違ってしまう。
近年ではツイッターやSNSが主流となりみんな自分で発信する。返信は「いいね」の一言にしても数が多いと処理するだけでもやっかいだ。「ともだちの友達はみな友達」ではない。
目下、日本中で渦巻いているのがワクチン接種の混乱ぶりだ。
まずはスターの接種券だけだ。夫は遅れてもはやオリンピックに突入後だ。しかも突如大規模接種場が設営されて先に発車した各駅電車が後から来た急行に抜かれる気分だ。
当然乗り換える人も多いはずだからワクチンはダブルだろうし混乱もいましばらく続くだろう。ただ夫婦別々に打ったほうがいざ副作用が出たときに何かとよろしいとの理屈を聞いて、「塞翁が馬」の故事をおもいだした。結果良ければすべてよしというべきなのか。ワクチン狂騒曲はまだまだ続くに違いない。
ここまで書いてきたものの、どうだろう。どうしても私事を書いてしまう。
 




                                                             

( 2021/06/05 )

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