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緑風

 平成の終わりと令和の始まりと

 年末から新年にかけて、心にかかる出来事が続いた。身近な男女2人、天に召されたのである。
共に70代。昭和に生まれ、平成を生き抜いた。ふたりに共通しているのは病名だけ。肺がん。
 病室へ駆けつけた時にはそれぞれに酸素吸入器を着けていた。はげしい息遣いに驚く。目は見開いたまま。碧く深い瞳、水晶でもみるような。男性は令和元年の終わり、女性は令和2年元日を迎えると数日して逝った。
 二人に人生の接点はない。男性は幼なじみ、家も近かった。高校を中退すると、上京、新宿歌舞伎町の夜の世界で名を上げ、仲間から頼りにされる存在だった。やんちゃで武勇伝にはこと欠かない。故郷を愛し、人を愛し、その上さびしがり。「男はつらいよ」の寅さんのような生き方だった。

女性の方は、圧倒的な美貌と知性を兼ね備えていた。女優の古手川裕子に比せられた(古いか)。もてないはずがない。なのに、生涯独身。老年に至っても縁談が続いたが結婚は拒否した。
昨年の5月以前であれば、平成の最後に亡くなったことになるし、新天皇が即位された5月以降なら令和になる。大みそかに亡くなれば、令和元年、明けて亡くなれば令和2年。たった数日違いで印象差は大きい。
世間では3月末日までなら早生れ、4月1日に誕生すると1日違いで入学年も違ってしまう。同級生と言ってもほぼ1年のひらきがある。大学ともなると三浪なら現役入学組と3年違う。それでも同級生に変わりはない。さらに5年遅れて卒業しても同級生で通用する。時に集まっても違和感はない。場に馴染んでいる。同世代とは入学年ということか。面白いものだ。
生身の人間も焼かれて、骨になると、小ぶりの骨壺に収まる。人は必ず死ぬものだから膨大な量になる。近年では散骨して川や海に流すよう遺言する人もふえた。この世に未練なく生き抜いた証しなのか。自分の人生は死んだらそれまでという諦観論者もふえているのか。令和の時代はおひとり様の先行きを予感してあまりあるような。

( 2020/01/24 )

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