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 梅ブーム再来

新元号「令和」に合わせたわけでもないのだろうが、たまたま新紙幣も発表された。5000円札が津田梅子である。津田塾大学を創設した人といえば、人となりは知らぬまでも女性の時代を謳うにはいい人選である。樋口一葉よりは、現代を映じていると思う。
一葉が若く貧しいまま亡くなった日、乗馬で参じたのが森鴎外だった。肺結核で25歳で無念の死を遂げた彼女の才能を惜しんだのであろう。森鴎外は明治の文豪として夏目漱石と並び称されるのに、鴎外は忘れられかけた作家である。お札の出番もないようである。
鴎外の作品に「帝諡(し)考」という100部限定の作品がある。歴代天皇の諡(おくりな)の出典を考証したもの。大正6年(1917)当時、鴎外は宮内省所管の帝室博物館館長兼図書頭であった。元号研究書としても第一級資料といえる。
鴎外が元号選定委委員の任にあたっていたらどんな元号を推薦しただろうか。ちょっとしたフイーバになっている。
「平成」に代わる新しい元号が「令和」に決まり後10日ほどで施行されるのだ。現存する日本最古の歌集「万葉集」の「梅花の歌32種」からの引用だった。
今の季節日本人の美意識を象徴するのは桜だ。それもソメイヨシノ全盛だ。18世紀にはすでに伝統的な八重咲き栽培品種の一部は成立していた。京都や江戸の植木職人が選抜を繰り返して作ったものだ。品種の育成には長い時間がかかる。費用も掛かる。今と違って余裕があったのだ。
桜は宮廷文化の中に取り入れられたことで日本を代表する花木になった。梅は中国からやってきたもので万葉の時代はなといえば梅花だった。香りもあるし梅干しもできる。婆さんを連想させるゆえか。新札効果で少しは梅ブームが起きるとうれしいのだが。

( 2019/04/15 )

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