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 梅雨の旅を

6月は旅行の閑散期とされる。なぜなら5月の長いゴールデンウィークが終わり、お金も体力も家族サービスで使い果たしているからだ。
 そう思って天を仰ぐと空は曇っている。何しろ大気が不安定で地上はじめじめしている。梅雨期なのだから仕方がない。雲の動きに注目して空を見上げるとよう。しとしとふりこめられるとユーウツになり体調もすぐれないということになる。でもそうした季節があることで日本の四季は完ぺきなものとなっているのである。木々のみどりは育ち、実りの秋も約束される。本来の旅の醍醐味を知る人はこの季節こそ旅に出る。それも一人旅がいい。雨粒マニアならスポイトを携えて顕微鏡を覗いて診るのも一興だ。いかに梅雨期と言ってもずっと連日雨ではない。雨のち晴れで変化に富んだ旅が満喫出来る。雨音に耳を澄ますだけでも癒やしになる。雨の季節となればまず濃霧が立ちこめる。これがいい。実に幻想的な体験となる。霧が晴れると本来の輪郭が明瞭になるが、かえって落胆する場合も多い。
他の季節ではあじあえない魅力をそなえているのが6か月なのだ。日本の風景の最大の魅力は水蒸気である。旅の名人だった宮脇俊三さんも、有名観光地や名山や紅葉ではなく「水蒸気」に感嘆すると書いてある。平凡な田園風景を絶景に変えてしまう。霧や雲にかすむ山河は日本人好みなのだ。
だから、旅行するにも6月に限るというしかない。雨模様を見ながらしんみりしっとり夢想におちいっていると人生のいろいろなことが浮かんでは消えていく。家族のこと、友人のこと、思い出すと懐かしく心持ちもほっくりとなる。みんな笑顔というのもいい。
 住宅宿泊事業法(民泊法)がきょう15日施行された。一般の住宅やマンション、別荘などでの民泊がスタートしたのだ。交流は深まるはず。旅に出よう。

( 2018/06/15 )

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