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 カズオ・イシグロVS. 石黒一雄

 石黒一雄さんなら日本に同姓同名の方もいらっしゃると思うがイシグロ・カズオさんとくれば今年のノーベル文学賞に輝いた日本人である。
川端康成、大江健三郎氏に続いての快挙である。イシグロ・カズオさんは長崎に生まれた1960年、5歳の時、両親とともに英国に移り住んだ。本来なら祖国を2つ持つといってもいい。でも日本国はそれを認めない。このため英国籍である。作品も英語で書く。だからペンネームもカズオ・イシグロとなる。
 ノーベル賞を受けたせいもあって増刷がなされ、多くの作品が書店に並び始めた。
英国では最高の文学賞とされる1983年のブッカー賞を受けた。邦題にひかれ「日の名残り」を手にした。
 主人に仕える執事の話である。日本なら秘書か下男といった役どころだ。下男となれば今では差別用語に近いのではないか。その反対に女性は、当初は下女と呼ばれたものの時を得て女中と昇格し、いまはお手伝いさんとなった。男は下男のままでもはや絶滅危惧種である。
 新しいスマホを手にしたら、画面上をヒツジの執事がちょこちょこと歩いて何か用事を頼むと「私の理解を越えます」「聞き取れません」とあまり役に立たない。ただインターネット万能の世の中ではコンピュータ世界では機器ロボットが人に代わってご主人様の用事をこなすということになっていく。
 ただし、機械の執事は主人に仕えたなら、裏切ることはありはしないが生身の人間の方はそうもいかない。執事としての人生の核心は主人に誠心誠意仕えることだった。でも人間は機械ではなくて感情を持つから一筋縄ではいかない。

( 2017/11/15 )

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