大山や池袋といった繁華街を控えたわが街は、緑には余り恵まれていません。しかし今年の夏、小学校の校舎を彩った緑は、生徒の心を和ませただけでなく、近隣住民の目の保養となったに違いありません。目にする度にボリュームアップしている緑のカーテンを、せめてカメラに収めておこうと夏休みに足を運んだ校庭で、「ねえ、素晴らしいでしょ。今が見頃ですよ。どうぞもっと近付いて撮っていって下さい。何人も撮りに来るんですよ。」と、指導員の方が話して下さいました。
緑のカーテンは、六年生が総合の時間に取り組んでいる活動です。暑い夏、クーラーなしで教室内で少しでも快適に過ごせるようにとの願いから、始められたのです。六年生の我が子によれば、土作りから、苗を植えツル性植物が這う為のシュロ縄作りに到るまで、全て子供達の手作業で進められたという事です。子供達の期待に応えるべく生い茂った緑のカーテン。確かに教室内は、人工的に作り出されたクーラーの冷風とは、一味も二味も違った体に心地よい涼風が、吹き抜けたようでした。
猛暑になった今年の夏、緑のカーテンは教室の子供達に恩恵を施しただけでなく、外から眺める私達の心にも癒しを与えてくれました。そればかりでなく、環境に優しいこの取り組みが、住民の環境への意識をも高めてくれたのではないでしょうか。つまり、安直に人工物であるクーラーにばかり快適さを求めずに、自然の力を利用しながらその恩恵に浴する道を模索するべきではないかと。
緑のカーテンが更に大都市のあちらこちらに出現すれば、緑多き街並みが住民の心に潤いを与えると共に、環境を大事にする精神が街に根付いていくはずだと、確信しました。小学生の地道な努力で出来上がったこの作品は、環境と人間との係わりを見つめ直すきっかけを、与えてくれたのでした。
(東京都板橋区在住)
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